未だ惑いっぱなし。

未だ惑ってばかり。インチキ料理研究家。ギターを弾きたい。

amazarashi 歌詞&詩

○タクシードライバー
ショッピングモール、アウトレット、郊外の黄昏
家族連れ、人いきれ、シャツに聖者の肖像、滲んで
車の牽引ロープを買った伏し目がちな青年 自宅の鴨居にぶら下げて首を括る予定
地方都市と呼ぶのもはばかられる様な町で 地元の友人と未だつるんで、たまには呑んで
息苦しさを感じながらも幸福だとうそぶいて 青い青空が青過ぎてもはや黒で
タクシードライバー 世情を憂いて 溜め息で曇る生活に流行歌
飲み過ぎてくだまいて突っ走る四号線 政治批判でもなんでもいいから話しをして
途方もない真っ黒が喉につっかえて 吐き出したくないもの吐き出してしまいそうなんだ
タクシードライバー 夜の向こうへ連れてって
優先席前に立ち尽くす妊婦がいたので 腹は立ったが結局なんにも言えなくて
サラリーマンが性的倒錯をスマホの画面でまき散らして 世界の気まずさがこの車両に凝固してる
遠い国の爆破テロ、および犯行声明 僕が聞いたのはタクシーのラジオAM
窓から六本木の高層ビルがいけ好かねえ 物質主義が貫通してる、東京の楔として
タクシードライバー トランクを開けてくれ 僕らの荷物、多過ぎて歩けない
流れる都市の景色があまりにもきらびやかで 相対的に僕らの幸福は萎縮して
汗かいて一粒の喜びに明け暮れて そのくせ帰りの道筋だって人任せ
タクシードライバー 夜の向こうへ連れてって
ニュースの紛争、ネットに流れた死体のjpeg 痛みを無視出来るなら人は悪魔にだってなれる
排他主義反対と疎外する人間が居て 暴力反対という暴力には無自覚な奴がいて
不良になる為には、まず良い人間にならなければ 家出する為には、まず家に住まなければ
運転手さん、あなたは出会った中で一番の思想家 生活に根ざした哲学で疾走する思想家
タクシードライバー 窓ガラスを開けてくれ 淀んだ空気 開け放って 夏の風
将来も未来も視界不良の道半ばで けど、不安に人生を明け渡せる訳はねえ
この長いトンネルは一体いつ抜るんですかね?
どうぞ行ける所まで行ってくれて構わねえ
タクシードライバー 夜の向こうへ連れてって

○「青森唱歌」
真っ白に染まる豪雪の 冬季封鎖の恐山
時化る陸奥湾の北風に 顔まで覆う外套か
突風吹きすさぶ深浦の 焼きイカ香ばし千畳敷
殿様ほどとはいかないが しばしAsahiで海望む
長い階段に腰降ろし 老婆ためいき仏ヶ浦
見よう見まねで手を合わす 信心なんてないくせに
はまなすラインの分かれ道 179と279
タバコを手向けて南無阿弥陀仏 あいつが事故って死んだ道
横浜町立中学校 今じゃひび割れた旧校舎
万年補欠のサッカー部 どこにも旅立てなかったジュブナイル 
だれが名付けたか「遊園地」 どんどり山の廃工場
錆びたパイプでふくらはぎを切って 子供らあわてて葉っぱで止血
三保野川で爆竹を 鳴らせば飛んでくる変なおじさん
ぼろいママチャリが異様に速くて 殺されるかと思って必死で逃げた
はじめてのコンサートの真似事 役場に頼んで借りた公民館
50Wのギターアンプダイエースプレー ここから世界が変わると信じてた
初恋は中学から一緒のあの子 結局実らなかったのはまあいいとして
やりまんだったとか今更いってくれるな それでもまじで好きだったんだしてよ
勇んで上京したのは二十歳だったか 気張って「俺」とか言ってたな
人称代名詞は世の中で一番短い自己紹介 だからわいは無理してでも「わい」って言う
バンドは売れねえしバイトもかったりいし 同棲というか、わいが転がり込んだ彼女のアパート
甲斐性ないからせめて揚げたカラ揚げは すんげえうまいって喜んでくれたからこづかいを貰えたよ
なんだかんだあってふるさとに帰る事にした どこにでもよくある都落ち
首をくくれたらまだかっこがついたかもな どの面さげても母親に会える気がしねえな
ふるさとに帰ってからいろんなところに行ったよ 恐山、千畳敷、仏ヶ浦、竜飛岬、十和田湖八甲田山
奥入瀬渓流、大湊の自衛隊、三沢の自衛隊、雲谷峠、大間崎 暇さえありゃ、っていうか暇しかなかったから車であちこち行ったよ
わいは生まれた町の事、なんにも知らねがったな 例えば今、青森市に住んでるんだけど青森空襲っていって戦時中に爆撃された事すら知らねがったじゃ
裏山の神社には、むかしむかし森に立ち入るときには木の幹に斧を引っ掛けて安全を祈願してたとか、そんな伝承があるとか、わいなんにも知らねがったじゃ 
じっちゃの葬式には行けなかった いや行かなかった って事は行けなかったって事と同じだな
人が死ぬのは嫌いだよ 線香の匂いとか、親戚とか、家族団らんとか反吐が出る ほんとに反吐が出る
そういえば中学生の頃 じっちゃの財布から一万円盗んだっけな
あれきっと、今から思えば絶対ばれてたよな でも怒られた事、一度もなかったな
とっちゃもかっちゃも大分老けたけど そんな事に感傷なんかないよ
じっちゃのぶどう畑も、子供の頃飼ってた犬も あれなんて名前だったっけ?
じっちゃはいつもぶどう畑 ビニールハウスで枝切って
肥料の匂いが嫌いだった 裏小屋の鉢の裏、家の鍵の隠し場所
とっちゃが勤めてた漁業協同組合 漁港でよく遊んだな
桟橋、テトラポッド、朱色の灯台 ガキのウニの密猟は許してくれた
住宅住まいシュウメイと タケルの家に忍び込んで
迷宮組曲パクったっけな かっちゃに拳で殴られた
迷宮組曲遊んでみた 今となっちゃつまらねえ
ノスタルジーはつまらないな 大人になんてなるもんじゃねえ
はまなすライン沿いの畑 あいつのとっちゃ、トラクターで
見渡す限りの地平線 耕す命よ芽生えたもう
はまなすラインの分かれ道 179と279
 花を手向けてナンマイダ あいつが事故って死んだ道
※繰り返し×2